天皇杯の敗戦を糧にするには。

2010/09/04

最悪の結果だった。

2-4。サッカーで相手に4点も奪われれば勝てるわけがない。それ以上に気になったのは試合前の雰囲気だった。スタンドを緑色に染めたS.C.相模原のサポーターやファンの中には、「天皇杯でフロンターレと試合ができる」と話していた。

ちょっと待ってほしい。川崎フロンターレと対戦するには、Y.S.C.C.に勝って神奈川県代表になり、天皇杯1回戦で鹿児島県代表に勝たなければ実現しない。それが、すでに気持ちは川崎フロンターレ戦に向けられていた。もし選手やスタッフが、同じ気持ちでいたら足もとを掬われると思っていた。なぜならY.S.C.C.は関東1部リーグ2連覇。さらに昨年は全国地域サッカーリーグ決勝大会において、決勝ラウンドまで進出し4位という結果を残している。上位3チームがJFLに昇格したことを考えると、現在、JFLに1番近いチームといえ、クラブの目標もアマチュアの最高峰であるJFL昇格である。今までの相手と同じように考えていたとしたら大間違いである。

試合はミスが多く、自滅したようにも見えた。しかし、ミスを誘発したのはY.S.C.C.の組織的なプレスと徹底したロングボール。格下相手なら個人の能力で崩せ、個人の能力で止めることができる。しかし、このレベルになれば簡単には崩せないし止められない。相手の組織的な守備にはまり、何をやっていいかわからなくなり、ボールを貰おうとしない選手も出てくる。格下相手にいくら活躍しても、このレベルで何もできなければJFLでは戦えない。日本代表でいうならばアジア予選で、いくら活躍してもW杯では戦えない選手と同じだ。スタンドから見ていて、それでも「勝ちたい」という気持ちが伝わってきたのは坂井洋平と、途中から出場した秋葉忠宏ぐらいしかいなかったことが残念でならない。

前半を1-3でリードされれば、何かを変えなければならない。

S.C.相模原は後半を3バックにして、相手のスピードがあるツートップ対策として秋葉をスイーパーに入れ、カバーリングに期待し、両アウトサイドを高い位置に置く3-5-2でスタートした。

考え方としては悪くはない。ただし、僕は相模原の3バックを見たことがない。ならば基本ベースである4バックを変えずに、秋葉をアンカーに置くというのはどうだったのか。坂井、鈴木健太のボランチは、最終ラインが不安定だったからか、思い切って前に出て行けなかった。秋葉がアンカーにいてくれれば、もっと前に行けたのではないか。まあ、これも結果論にしかならないことだが……。

ひとつ気になったのは守備の連動性だ。FWのファーストアプローチで相手のパスコースを限定させ、限定させたパスコースをサポートに入った2人目、3人目の選手がパスカットする。相手がパスカットを読んでいればバックパスをするしかない。バックパスをしてくれれば最終ラインを上げることができる。相手が戸惑えば3人で囲んでボールを奪う。連動した守備が機能しているチームというのは、ファーストアプローチに対して全員が動いている。残念ながらバックパスが多かったのはS.C.相模原のほうだった。

なぜ、守備の重要性を問うかというと、スペイン代表でもバルセロナでも、黄金時代のジュビロ磐田でもヴェルディ川崎でも、攻撃力ばかりがクローズアップされるが、どのチームもしっかりとした守備があり、失点は1試合平均1点以下である。J1、いやJ2に所属していた選手であれば、この連動した守備の練習は何度も経験しているはずだ。

全国社会人サッカー選手権に向けて、守備の修正は必要だ。連動した組織的な守備ができれば、相模原の攻撃力をもっと活かせるはずだ。

試合後「負けたのが天皇杯でよかった」という声もあった。しかし本当に「良かった」といえるのは、全国社会人サッカー選手権で勝ち進み、全国地域リーグサッカー決勝大会で決勝ラウンドに進み、そこで勝ってJFL昇格を決めたときだ。

先日、天皇杯1回戦を取材した。

「ヴェルディ黄金世代」と呼ばれるヴェルディユースと駒澤大学の試合だった。試合はヴェルディユースが完全に試合を支配していたが、駒大の1発に沈んだ。今のS.C.相模原にとって大事なことは、簡単に勝てる試合などない。ということを肝に銘じ、どんな相手であろうとリスペクトして、目の前に試合に全力を尽くすことだ。なぜなら、サッカーというスポーツほど何が起こるかわからないからだ。

渡辺達也

共通意識

2010/07/27

選手個々の能力は確実にアップしている。それも飛躍的に……。

S.C.相模原は、昨シーズン、越えることのできなかったハードルを一つクリアした。7月11日、全国社会人サッカー選手権の関東予選ブロック決定戦で、さいたまSCに3-0で勝利。これにより10月16日から山口県で開催される本戦への切符を手にした。

昨シーズンのS.C.相模原は、同位置でY.S.C.Cに敗れ、全国への道を絶たれた。そのショックは翌週に開催された天皇杯県予選2次トーナメントの初戦にも影響を及ぼし、桐蔭横浜大学に敗れ、短期間で大きな目標を2つ失う結果となった。

今シーズンは、関東予選を突破した勢いのまま、7月25日に行われた東邦チタニウムとの天皇杯県予選2次トーナメントに6-1と快勝した。2トップを組む齋藤将基が4点、森谷佳祐が2得点と、FWが結果を残している内容は、強さを感じさせ、チームとして機能しているように映る。

だが、試合を見ていて、ちょっとした疑問と不安が生まれた。S.C.相模原のサッカーは、昨シーズンと変わっている……。

「S.C.相模原のサッカーは運動量に尽きる」。多くの選手が、チームのサッカーをそう表する。コンセプトを決めている代表の望月重良は、豊富な運動量をベースに、サイドで数的優位を作り出し、ゴールをこじ開けていくサッカーを標榜している。特に、ディフェンシブな戦術を採用する相手との試合では、サイドに起点を作ることで、ゴール前を固めている守備を広げ、そこから中央を打開する狙いを持っている。その際、ゴールを生むために発揮されるのは、混戦でのパスワークであり、連動したコンビネーションだった。

そうした意識で、全社の関東ブロック決定戦や天皇杯県予選の初戦を見ると、違和感を感じる。さいたまSC戦でも、東邦チタニウム戦でも、均衡を破ったゴールは、意図したコンビネーションではなく、個人技による比重が大きかった。

右SBを務める金澤大将は東邦チタニウム戦後、こう振り返った。

「夏場の試合ということで、堅いというよりは、身体が重かった。徐々にボールを回せるようになってきてはいたけれど、そうしたときに齋藤さんが個人技でゴールを奪ってくれた。それで緊張というか、重さが取れた。齋藤さんに救われたのは間違いない」

望月も指摘している。

「個のレベルが上がり、個々で何とかしようとする傾向が確かにある。いいプレーをしようとするため、その分、判断が遅れ、逆に相手に読まれてしまうこともある」

メンバーが大きく変わった今シーズンのS.C.相模原はスタメンのほとんどがJリーグ経験者になった。個の能力は飛躍的に向上し、県リーグや関東リーグの相手ならば個の力でもいなせてしまう。

個で勝負するのは決して悪いことではない。東邦チタニウム戦の47分に決まった齋藤のヘディングシュートは、まさに金澤が右サイドで一対一を仕掛け、相手を抜き去ったクロスから生まれた。

しかしながら、山口県で行われる全社の全国大会、さらにその先に見据えている地域リーグ決勝大会で、同様の攻撃だけで勝ち上がっていけるだろうか。

昨季のS.C.相模原は、個のレベルで言えば、現チームよりも劣っていたであろう。だが、その分、昨季のチームは、個をチームで補おうとするコンビネーションの確立に総力を注いでいた。運動量があり、バイタルエリアではボールを持っていない選手のフリーランニングや相手を攪乱する動きが頻繁に見られた。

それが今シーズンは、どこか大味に見える。こと先制点を奪うまでは……。1点奪い、精神的に楽になると、意図した攻撃やピッチを広く使った展開を見せるようになるが、それまでは、まるで別のチームのようでもある。

クラブ創設時に加入し、今季で3年目を迎える背番号10の坂井洋平も感じている。

「個のレベルが高くなって、チームのサッカーは変わったかもしれません。全社関東予選の3試合は、連戦だったため、チームとして今のサッカーで行こうと意識は統一されていた。でも、今後は今のサッカーで行くのか、それとも昨シーズンのようにパスワークを生かしていくのか。チームとして共通意識を突き詰めていく必要があるかもしれない」

望月は言う。「確かに昨シーズンのほうが、がむしゃらさはあったかもしれない」。

県リーグ、天皇杯県予選と、過密日程により、チームを見つめ直す時間は限られている。W杯による中断期間中に修正を図れたJリーグ勢よりも、S.C.相模原が置かれている状況は厳しい。だが、そうした中でも10月に向け、チームは進化していかなければならない。同等の力を持つ相手との対戦を意識したチーム強化が、今のS.C.相模原には求められている。戦っているのは県リーグではあるが、視線はさらに上にある。

原田大輔