2つの戦い方。

2012/05/10

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失敗から学び、経験として生かす。

人は失敗から多くを学ぶとはよく言われることだ。しかし、その失敗によって得たことを次に生かさなければ、それは経験とは言えない。サッカーでもそれは同じ。課題を突き詰めて修正する。そして、試合で成果を出すとともに、新たな課題に取り組んでいく。この反復がチームを理想へと、完成へと近づけていく。

SC相模原は、今、まさにその経験を次に生かそうとしている。

2012シーズンも開幕から5試合を経過した。開幕戦でさいたまSCに4-1で快勝したSC相模原は、2節、3節では2-1で辛勝する。すると、4節のヴェルフェたかはら那須戦では先制を許すと、一度は追いつきながらも、後半に再び突き放され、今季初黒星を喫した。25本ものシュートを放ちながら1点しか奪えず、わずか5本のシュートで2得点した相手に、ホームで屈したのである。

この敗戦で課題は浮き彫りになった。相手はキックオフから守備的な戦いを選択し、カウンターに活路を見出していた。ボールを支配し、主導権を握っていたのはSC相模原だ。しかし、21分に一瞬のスキを突かれ、ゴール前にクロスを入れられると、DFのマークが甘くなったところからシュートを叩き込まれた。CKの流れから工藤が押し込み同点としたが、62分にもカウンターから失点。その後、猛攻を仕掛けるも1点が遠かった。

木村哲昌が新監督に就任し、新たなスタートを切った5年目のSC相模原は、「ボールを奪って早く仕掛けるサッカー」をコンセプトに掲げた。GKからFWまでの全員が高い守備意識を持ち、連動した動きによって高い位置でボールを奪うと、素早くゴール前へ展開していく。ギラヴァンツ北九州から加入した宮川大輔が「監督からはDFの裏へと走る動きを求められている」と教えてくれたように、ボールを保持したら、まずはDFラインの裏へと走るFWにパスを出すことを第一に考える。それが難しければ、両サイドへと展開し、そこからクロスを入れることでゴールを狙う。

確かに開幕戦は良かった。初戦ということもあり、相手はどんな戦い方をしてくるのか分からなければ、スカウティングもできていなかったであろう。ところが試合を重ねていくことで、サッカーのスタイルは知られていく。また、決定的だったのは、先制できれば相手は前がかりにならざるを得ず、後方にスペースができるが、先に得点を奪われればゴール前を固められ、チームが狙うべきDFライン裏のスペースは限りなく狭くなってしまう。ゴール前に人が増えれば増えるだけ、クロスの精度は問われていく。まさにヴェルフェたかはら那須戦は、そうした要素が揃っていた。シュートがクロスバーを叩く惜しい場面もあったが、ミドルシュートを放とうとも、クロスを入れようとも、結果的にすべてを弾き返された。

速く仕掛ける攻撃&つなぐ攻撃の2つ

敗戦を受けて、ピッチに立っていた選手たちは危機感を感じた。前述の宮川は、「今までのやり方だけで、引いて守りを固めた相手をこじ開けるのは難しい」と話せば、FW森谷佳祐も「時間帯によって違う戦い方もできるようにならなければ」と語った。また、守備意識を高く持ちながら、毎節失点していたDF陣も同様だった。それを自らも感じ、汲み取った木村監督はチームに新たなる指針を示した。

それが“つなぐサッカー”である。時間帯によってチームは戦い方を変えていく。あくまでファーストチョイスはDFの背後を突く早い攻撃だが、相手が守備にシフトしたときは、人が動き、ボールを動かすことで、その壁をこじ開けていく。

ただし、これにも課題はある。それは前期5節の東邦チタニウム戦が明らかだった。ボールを動かして相手を翻弄するには多彩なパスワークとコンビネーションが求められる。いわゆる阿吽の呼吸というものが必要となってくる。あのバルセロナとて、華麗なコンビネーションで世界一の強豪と言われるまでには、日々の練習での積み重ねがある。

それは1週間で身につくものではなく、東邦チタニウム戦ではつなごうとするもパスが合わず、逆にSC相模原がやりたい、素早い攻撃を相手に仕掛けられてしまう場面もあった。1-0で勝利するも木村監督が「すっきりしない勝ち方でした」と、今季のワーストゲームに認めるほどの内容だった。

しかし、選手たちはつないで崩すことの難しさを感じる一方で、可能性をも感じていた。CBやSBでプレーする鈴木祐輔は「どちらのサッカーもできるようになれば、相手にとってこれほど嫌なチームはない。それに上を、先を目指すにはどっちのサッカーもできなければならない」と話す。つなぐサッカーを機能させるには、これまで試みてきた攻撃よりも時間を要するだろう。チーム全体の意志統一が図れるようになるまでには、まだまだ時間がかかるであろう。

SC相模原は敗戦という経験を得て、新たな方向性を打ち出した。時間帯によって、状況によって、するべきサッカーを選択していく。

2つの戦い方は、どのチームもが理想とする永遠のテーマでもある。

しかし、クラブの目標を達成するには、その2つの戦い方が必要となる場面は必ずくる。それができたとき、SC相模原は、嫌なチームであると同時に、勝てるチーム、負けないチームとなる。

敗戦を経験したことで、SC相模原は次に生かそうとしている。

原田大輔

規律〜チームに浸透する組織力〜

2012/04/04

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チームコンセプト「CAN」が意味すること

2012年の始動初日、グラウンドに集まった選手たちは、自分たちだけでミーティングを行った。新キャプテンに就任した佐野裕哉が音頭を取り、意見交換は進んでいく。そこで議題に上がったのは、規律についてだった。

選手たちは、練習への姿勢、集合時間に遅刻した場合の制裁、さらには子どもの模範となり市民に親しまれる選手になるための身だしなみについてなど、さまざまな項目について忌憚のない意見を出し合った。当たり前のことではあるが、サッカー選手である前に、いち社会人としてどうあるべきか。それを選手たちが一堂に会して話し合う機会は、クラブ創設以来、初めてのことだったかもしれない。それも誰かに促されたり、誰かに忠告されたりしたのではなく、選手たちが自主的に行ったという、その事実がクラブとしての成長や変化を感じさせる場面だった。

新監督に就任した木村哲昌もまた、規律という言葉をよく口にする。就任に際して、選手たちに「CAN」のチームコンセプトを掲げたのも、その規律を強く意識させるためのものだ。「CAN」とは、それぞれ意味ある言葉の頭文字をつなげたもので、Cはcooperate、「勝利のために、選手個々がチームに協力する。チームのために尽力する」ことを示している。Aaction、それは「攻守ともに自らアクションを起こす。攻撃では自ら仕掛けてゴールを目指し、守備でも自分たちで相手を追い込み、ボールを奪う」ことを意味している。最後のNnever give up、これは言わずもがな「諦めない精神。選手全員でハードワークする。ボールを奪うために走り、泥臭いサッカーをする」ことを意識付けしている。この「CAN」をモットーにSC相模原の選手たちは、長いシーズンを戦っていく。

規律を重んじる木村新監督

これまでチームを率いてきた望月重良や戸塚哲也は、どちらかといえば規律よりも自由を尊重する指揮官だった。どちらが良い悪いということではなく、これはあくまでアプローチに過ぎないが、前任者たちはルールを作るのではなく、イメージを共有させ、そこから先は選手たちの思考やアイデア、さらには意識によってゲームを組み立てていく道を選択した。これは、はまれば爆発力や破壊力があったが、プレッシャーのかかる試合などで、1人が精細を欠くだけで、大きく安定感に欠けるという諸刃の剣でもあった。

一方、まだ未知数ではあるが、ある程度の約束事、ようするに規律を持って戦うことで、チームの安定感は変わっていく。最もそれが大きく発揮されるのは、迷ったり、悩んだりしたときだろう。立ち返る場所があるチームは強いのである。昨シーズンのJ1で、昇格初年度にも関わらず優勝した柏レイソルが、連敗なくシーズンを乗り切ったのは、その立ち返る場所がはっきりとしていたからと、選手たちは語っている。

ルールや約束事によって選手たちを雁字搦めにするわけではないが、木村監督が規律を掲げることで、チームの立ち返る場所は明確となる。シーズンにはリーグ戦もあれば、トーナメントも、それこそ連戦もある。そうした中でチームが迷ったとき、選手が悩んだ際に、高い位置(レベル)でのスタートラインに戻れるのは大きい。浸透するには時間も擁するであろうが、そこは大学を指導してきた木村監督のことだ。その過程は計算済みであろう。

クラブ創設5年目という節目を迎えることもあり、SC相模原は大きな改革を行った。これまでチームを支えてきた多くの選手が退団し、今シーズンは多くの新加入選手が加わった。指揮官も望月から木村に代わり、チームは新たなる一歩を踏み出す。下から一歩、一歩、着実に上がってきたという歴史を忘れずに、チームは新たなるシーズンの開幕を迎える。規律あるSC相模原は、どんな変化を開幕戦で見せてくれるのか。関東の頂点を決める関東社会人リーグ1部の前期1節は4月8日に幕を開ける。SC相模原の初戦はさいたまSC。秋葉の森総合公園サッカー場で13時にキックオフする。

原田大輔